2009年01月13日

パパは楽しい躁うつ病



本屋で偶然見かけて、即購入した本。

というのも、僕が双極性障害、つまり躁うつ病と診断されてから、『あの北杜夫もそうだ』という話を何人かから聞かされたからである。

僕の知識で北杜夫と言えば、精神科医にして作家。『どくとるマンボウ航海記』くらいしか読んだことがない。あの北杜夫も躁うつ病なのか。

うつ病に関する本は巷にいやというほどあふれているが、躁の闘病記(?)というのは本当に少ない。だから購入したのだ。

この本、北杜夫とその娘である斎藤由香との対談という形式で書かれている。むしろ、娘の斎藤由香のほうが先導して、父親から躁体験を聞き出している感じ。「あの時はたいへんだったねえ」という風に、親子で昔話をしている、そんな本である。

しかし書かれている内容はすさまじい。うつ状態の時はおとなしいものである。無言、無関心になり、ひたすら眠り続ける。これは僕の場合も同じ。

しかしいったん躁転するととんでもない日々が始まる。

「映画を撮るぞ!」

北杜夫はそう思い立ち、資金をつくるために全財産を株につぎ込む。しかし複数の証券会社で思いつきで株を売買するものだから、もうメチャクチャ、破産寸前までいく。

さらには妻に暴言を吐き、妻を非難するメモ書きを何枚も書いてテーブルにおく。

睡眠時間は短くなり、朝から晩まで株式情報の無線を大音量でかけ、さらには英語を勉強すると言って英会話ラジオも大音量でかけ、一日中大騒音が家中に響き渡る

ついに北杜夫は日本から独立すると言い出し、「マンボウマブゼ共和国」を自宅に建国、大金をつぎ込んで自国の紙幣や煙草をつくり、毎年「功労者」を呼んで表彰式をおこない、知人らに軍人のかっこうをさせて家中を行進する。

また、デパートの満員のエレベーターの中で「愛してる!」「好きでちゅ!」と絶叫する・・・・・・。

僕はここまでひどくはないかな。僕は躁のときはどちらかと知識欲・創造欲にエネルギーが向くので。

「反重力発生装置」や超能力の研究に没頭したり、特許を出願したり、深夜に突然友人宅に押しかけたり、古代遺跡を探しに近所の山に分け入って遭難しかけたことならあるが。

いや、しかし「ひどくない」と思っているのは実は僕だけで、周囲はけっこう大変なのかもしれない。自分ではわからない。

北杜夫の場合もそうで、娘が父の昔の話をしても、当の本人は「そんなことあったかな」と飄々としている。まるで他人事である。

彼の場合ラッキーだったのは、奥さんがあえて深入りしようとしなかった点だ。奥さんは北杜夫を患者扱いし、自分は看護婦に徹したようだ(本書によるとそれでも一度は「オレは自由に生きるから出て行け!」奥さんも娘も追い出され、数年間別居生活を送っているが)。

この接し方は正しいと思う。躁うつ病を経験したことがない人間が躁うつ病患者の気持ちを理解しようとしたって、根本的に無理である。理解しようと無駄な努力をされるのはかえってうっとうしい。ほっておいてほしい。あえて面倒を診るとすれば、躁うつ病患者が自殺しないよう、見張っておくことくらいか。

娘はと言うと、本のタイトルにあるとおり、躁状態になった父が楽しかったらしい。父がうつ状態になるとつまらなくて、「はやく躁にならないかな」と待ち遠しかったと言う。無邪気と言うかなんと言うか。

ともかく僕の体験から言うと、躁うつ病というのは、はた目から見て楽そうでも実は本人は地獄の苦しみを味わっていたり、逆にものすごく大変そうでも実は恍惚とした至福感を味わっていたりと、わかりにくい病気だとは思う。

だからフツーの人からは理解されなくてもいい。ただ自分の居場所を確保してくれるだけで救われるところがある。

しかしやっぱり躁うつ病って、本人が精神科医でも治しにくい病気なんですかね。

posted by にあごのすけ at 07:18| Comment(2) | TrackBack(2) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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