2008年07月27日

精神科のくすりを語ろう―患者からみた官能的評価ハンドブック

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精神科のくすりを語ろう―患者からみた官能的評価ハンドブック
熊木哲夫/日本評論社


子どもの頃からさまざまな精神症状にふりまわされ生きてきた。でも精神科というものに通いだしたのは2年前からである。へんな言い方だが、長年、精神症状と共に生きてきたので、ある意味慣れっこになっていた自分がいる。

しかし精神科というところがどういう場所か、ずっと興味はあったし、第一うつがひどくてどうしようもなかったので精神科のドアをたたいた。それが2年前。

それからいくつかのクリニックを移った。そして驚いた。

向精神薬に対する共通見解というものが、精神科医の間でまったく存在しないに等しいのである。

あるクリニックが処方した薬を別の医者に見せて、「こんな危険な薬飲むなんて!」と、けんもほろろに怒られたこともあった(僕に怒るなんてお門違いもいいところだが)。

僕は現在、抗うつ剤「パキシル」をやめようとしていて、その断薬症状に苦しんでいるのだが、いま通っている医者は、「パキシルがやめられない? 断薬症状? 私が知るかぎりでは聞いたことありませんねえ・・・・・・」と首をかしげるばかりである。

精神科医という存在は、「科学者」というよりも、むしろ自らの経験と勘に頼ってくすりを処方する「漢方医」に近い。

さて、本題に移ろう。

「先生の言うとおりにおくすり飲んで〜」と最初は思っていたのだが、先述のとおり、医者によって言うことはバラバラ。薬の添付文書を読んでも、「効能:うつ病・うつ状態」と判で押したようなことしか書いていない。

非常に歯がゆい。
そこでこの本の登場である。

著者である熊木徹夫氏は精神科医で、自らのウェブサイトで、服用体験者から薬を飲んだ感想を募っている。それを1冊にまとめたのがこの本である。

たとえば同じ抗不安薬でも、効果も利き方も微妙にちがう。そして「どう利いているか」を感じているのはあくまでも患者の主観である。

科学というのはやっかいなところがあって、さまざまな実験結果や統計結果から「客観的に」薬の有効性を判断しようとする。しかし「客観的」であるがゆえに、飲む側の「主観」がどこまでも抜け落ちていってしまう。その点で、患者の主観的な感じ方を収集したというこの本は意義があると思う。

向精神薬を飲んでいる人、この本を読んで初めて「そうそう」と腑に落ちる人も多いと思う。

ひとつ気になる点は、個々の患者の感想に、著者である熊木氏がいちいち反応しているところ。

たとえばある患者が「向精神薬××を飲んだら下痢がなおった」と発言する。それを受けて熊木氏は「××が下痢を治す効用があったとは新しい発見だ」といちいち真に受けすぎているのである。

下痢が治ったというのは思い込みかもしれない。あるいは薬を飲むことによって生活が改善されたことによる二次的な結果かもしれない。あるいは同時に飲んでいる別の薬のせいかもしれない。

そこを突き詰めていくのが科学なのであるが、熊木氏はそういう姿勢を放棄してしまっている。あるいは彼は確信犯的にそうやっているのか? この本のテーマからして、そうかもしれないとも思う。

とにかく、現在向精神薬を飲んでいる人にはおすすめの本。なんの参考にもならないかもしれない。でも、「ああ、みんなたいへんなんだな」と、妙に孤独感が癒される本である
posted by にあごのすけ at 17:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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