2008年10月05日

生きづらい<私>たち



香山リカといえば、時々テレビに出てくるタレントまがいの精神科医、というイメージしかなかった。

でもこの本を読んで印象は変わった。

冷静だけれどもできる限り患者の視点に近づいて心の病をとらえようとしている。なおかつ現代という時代を非常によくとらえている。好感が持てた。医者としての暖かい視線を感じられる本である。

(この本は4年前に書かれた本なので、現在は心の病をとりまく状況が若干変わっているかもしれない。逆に言うと、4年程度で古くなってしまいかねないほどの「旬」なネタを扱っている)。

彼女は現代社会を生きる「生きづらい」と思っている人々を取り上げ考察する。

リストカットなどの自傷行為をくりかえすボーダーライン(境界性パーソナリティ障害)な人々の考察。

個人的な話になるが、僕も20歳ごろは煙草で根性焼きをくりかえしたり、髪の毛を抜いたり(抜毛症)していたので、多少なりともそのケはあるのだろう。

僕の注意を惹いたのは、香山リカが「現在はボーダーラインよりも解離性障害が増えつつある」と主張している点だ。奇しくもやはり精神科医の斎藤環が同じことを言っていたからだ。

解離性障害とは、言うなれば「自分」がバラバラになる精神症状の総称である。

僕は精神科医ではないので責任は持てないが、症状をまとめると以下のようなものになる。

記憶が飛ぶ。気がつくとまったく別の場所にいたり、自傷などをやらかしていたりする。
多重人格。複数の人格がひとりの中に同居する。
離人症。周りの出来事がリアルでなくなり、まるで映画でも見ているようにしか感じられなくなる。また、モノが実際より巨大に見えたり小さく見えたりといった知覚障害も含む。
■その他、トランス状態、憑依状態、失神、混迷、運動障害など。

一般に解離性障害というとき、「自分が自分でなくなる」諸症状をさすことが多い。

香山リカは解離性障害が増えた原因についていくつか原因を考えているが、そのひとつとして、ネットが普及したことによって、いつでも『自分じゃない自分』になることが容易になったからではないか、と主張している。

いまいち説得力に欠けるが、僕自身もろにネット世界の人間なのであまり反論できない。

・・・・・・で、いきなり結論だが。

僕は精神病や心の病の本を読んで「よかった」と思うことはあまりない。なんだかいきなり土足で心の中に踏み込まれて、それも全然的外れなところをいじられているような気がして、気持ち悪いのである。

しかしこの本は読んで「よかった」と思った。

本書の最後のほうに、「じゃあこうすればちょっとは生きやすくなるのでは」ということを書いている。

「こうすればいい!」などと断言はしていない。あくまでも彼女の意見として、言葉を慎重に選びながらアドバイスを書いている。そのあたりも、香山リカはちゃんとした精神科医なんだな、と好感が持てる本である。
posted by にあごのすけ at 22:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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