2009年01月21日

睡眠薬考(後編)

睡眠薬考・前編のつづき

精神科で初めて向精神薬をもらったときは正直うれしかった。それも、処方される量が多ければ多いほどうれしかった

なぜなら薬の量が、僕のつらさや苦しさを定量化してくれているような気がしたからである。

他の病気なら、外からみてある程度察してくれるが、こころの病はなかなかそうはいかない。僕のこころの中がどうなっているか、誰も察してくれない。「つらい」「苦しい」なんて口に出したところで、単なる意気地のないやつと思われるのがオチである。

しかし向精神薬をもらえば、「僕はやっぱり病気なのだ」とあらためて自覚することができるし、必要とあらば薬の山をジャラジャラと人前にぶちまけて自分の苦しみを主張することもできる。

最近はさすがにそう思うことはなくなったが。悪く言えば一種のステータス

睡眠薬の話に戻ろう。

ある日、通院しているクリニックから電話があった。

「先生が急病なのでしばらく休診します」

いつ再開するかもわからないという。無責任な話である。

僕は緊急に新しい通院先を探さなければならなくなった。しかし行った病院で、開口一番、先生にケチョンケチョンに言われた。

「あなた、これは飲みすぎですよ!」

僕は前の医者に言われるとおりに服用してきただけなので、ガクゼンとした。

「特にこのラボナ! ラボナを出すなんて信じられない! これは現在は麻酔とかにしか使わない薬なんですよ!」

あとで調べてわかったことだが、ラボナはバルビツール系というかなり古い部類の睡眠薬である。古いということはそれだけ問題もあるということで。睡眠を促すと同時に、心臓や他の器官も弱めてしまう。

つまり致死量が低い。ものの本によると、ラボナわずか20錠で自殺したケースもあるらしい。それを僕は毎日2錠飲んでいたわけである。芥川龍之介も同じバルビツール系睡眠薬で自殺したし、太宰治もこれで何度も自殺未遂をした。

(注:念のために書いておくが、ラボナ20錠で自殺、というのは稀なケースのようである。いろいろ調べたところ、実際は数百錠飲んでも死ねないケースが多い。代わりに、ラボナには筋肉を溶かす作用があるので、自殺に失敗して重い障害を背負いながら生きなければならなくなることもある。念のため)。

「とにかく、薬物中毒の方はウチでは診ることはできません!」

こうして僕は剣もホロロに追い出された。理不尽な話である。しかしこれで、僕が薬物中毒状態になっていることをようやく知った。

友達の紹介で、新しく通院できるクリニックをなんとか見つけることができた。診察の結果、病名がうつ病から双極性障害(躁うつ病)に変更になった。

処方された睡眠薬は以下のとおりである。

ユーロジン 2mg×1錠
コントミン 25mg×1錠

ユーロジンは中期型。比較的副作用が少なく、安全性の高い睡眠薬らしい。

コントミンは睡眠薬ではなく、メジャートランキライザーである。統合失調症の治療などにも使われる。なぜコレを出されたのかは不明だが、躁病の症状にも効くらしいから、そのためだろうか。

(ちなみに、これもまねをしないでほしいが、コントミンと酒をいっしょに飲むとたいへんである。朦朧状態、立っているのもたいへんな状態となる)。

しかしこれまで強い薬ばかり飲んでいた僕には、コレは効かなかった。

「先生眠れません」

すると先生、静かな口調で、

「うん、そういうときはね、軽い運動をすれば寝つきがよくなることがありますよ」

拍子抜けである。前の医者とは正反対、あまり薬を出したがらない。でも僕の場合、そのくらい慎重に処方してくれたほうがよいようだ。

しばらくして、眠れない時用の頓服としてコレを処方された。

レンドルミン 0.25mg×1錠

先生いわく、「世界で一番安全な睡眠薬」だそうである。

例年のことであるが、秋から冬にかけてうつ傾向がひどくなった。レンドルミンをやめてコレが追加された。

エバミール 1mg×1錠

短期型。これも比較的安全な睡眠薬だそうである。

現在はこの3種、ユーロジン、コントミン、エバミールで落ち着いている。いまではすっかり朝型人間になった。躁うつ病が改善したかどうかはまた別の話だが。

いまとなっては、ハルシオンにラボナにロヒプノール、あんな強烈な薬は怖くて飲む気にはなれない。

ずっと弱い薬をずっと少ない量で、睡眠が改善されたことは興味深いことである。これはあくまでも僕のケースなので、他の人にあてはまるかどうかはなんとも言えないが。

最近は、本当に子どものときぶりくらいに、朝食をとる習慣がついた。

posted by にあごのすけ at 09:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 精神 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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