2009年02月02日

世界でいちばん好きな人



ひとつのジャンルとしてくくってしまっていいのかはわからないけれども、昔から、おそらく世界中に、「戦争に反対し平和を願う歌」というのがある。

日本で言えば60年代、学生運動の頃にそういった歌が多く作られた。

さて、911の世界同時多発テロという、おそらくは何千年も歴史に刻まれ続けるだろうあの大事件のあと。日本でも一部のアーティストが、この出来事や、それにつづく戦争をテーマに歌を書いた。

僕の聴いた中で一番メッセージが明確なのは長淵剛だろう。静かなるアフガン


とにかく熱い。力強い。ビンラディンやブッシュを名指しで非難し、戦争反対を攻撃的なまでに主張する。

もうひとつ僕の印象に残っている歌と言えば、以前の記事でも紹介した、さだまさし遙かなるクリスマス


こっちも熱いが、長渕に比べれば戦争反対のメッセージはずっとひかえめである。

「自分は戦場に行ったことがないので、自分の目線からでしか戦争を歌うことができない」

以前に行ったライブで、こういう趣旨の発言をしていた。世界情勢を憂いながら、途中から自分の身の周りの「不幸」に目が行き、最後は「永遠に君が幸せであれと叫ぶ」と、愛する人への想いへと収束していく。さだまさしは反戦歌をけっこう書いているが、こういうパターンのものが多い。

一言で反戦歌、平和を願う歌といってもさまざまである。

さて、次の歌はどうだろう。



世界でいちばん好きな人

詞曲 KAN

確かなことはわからないけど すごく不安がつのる
明らかなように伝わるあやふやに囲まれて

この国に生まれ 君と出会い この街にふたり暮らす
舞い降りた偶然を受け入れた真実

世界でいちばん好きな人
それはあなただと言い切れる
この想いがまっすぐに伝わるようにと手をつなぐ

日本がずっと平和なまま 続いて行くとは限らない
だから今この普通の日々を大切に生きる

時にぼくらは少しくい違い 意志をぶつけ合う
そんな時はただ雨降るように透明に丁寧に

確かなものは残ってないけど 少し自信が持てる
いつか静かに君の存在に裏付けられて

世界でいちばん好きな人
それはあなたと言ってくれるなら
その想いがいつまでも変わらぬようにと抱きしめる

遠くで起きてる戦争は いつ終わるのかもわからない
せめてぼくらはずっと互いを 許し合い生きよう

ぼくは誰とも争わないし 誰を憎む根拠もない
ただ落ち着きを取り戻すため ちらつくテレビを消そう

世界でいちばん好きな人
それはあなただと言い切れる
この想いがいつまでもずっと変わらすように
今この普通の日々を大切に生きる

KAN世界でいちばん好きな人という2006年の作品。

最初聴いたときは、「ああ、フツーのラブソングか」という印象しかなかった。でも何かがひっかかった。そして何回か聴いてようやく気づいた。

これはただのラブソングではない。実はKANなりの反戦歌なのである

「日本がずっと平和なまま続いて行くとは限らない」
「遠くで起きてる戦争はいつ終わるのかもわからない」


こう彼は歌う。しかし戦争反対とは一言も言わないし、戦争が悲しいとも言わない。ただ、「だから僕らは普通の日々を、許し合いながら生きよう」と結ぶ。

消極的である。「反戦歌」というジャンルに入れていいものかさえ迷う。でも実際のところ、一般の日本人の戦争に対する気持ちなんてこの程度なんじゃないのか。

戦争に対する等身大の思いをKANは正直に歌っている。

申し訳ないながら、僕はなんの平和運動もボランティアもしていない。でも戦争を嫌い平和を望む気持ちは持っている。酒場に行っては時々、世界平和について熱く語り合ったりする。

でも酔って帰り、翌朝起きればすっかり忘れて仕事へと向かう。悲しいけれどもそんなもんだ。

けれども、KANの秀逸なところは、歌詞の以下の部分だ。

ぼくは誰とも争わないし誰を憎む根拠もない
ただ落ち着きを取り戻すためちらつくテレビを消そう


僕はこの言葉に、大げさだがマハトマ・ガンディーの非暴力・不服従主義に似た決意を感じるのである。

戦争のことはわからない、でも世界がどうであれ、僕は誰とも争わないし誰も憎まない。

毅然とした態度を感じる。

また、「ちらつくテレビを消そう」という部分、情報のシャットアウトのようにも見えるが、ここもガンディーと共通している部分である。ガンディーは、新聞を読んで騒がしい世界情勢の情報が入ってくると心が乱れるとして、新聞を読まなかった。

結論。

「KANは、マハトマ・ガンディーに通ずる非暴力主義を貫こうとしている」

Wikipedia程度の知識でこんな仰々しい説を唱えるのはおこがましいにちがいない。

でも最近、この歌が僕の身の丈に妙にフィットしているように感じるのである。

posted by にあごのすけ at 00:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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