2008年10月06日

葬列

葬式の参列を見た!

大勢の人間が喪服に身を固めていた!

貸切バスが何台も到着し、真っ黒な集団を次から次へと吐き出していた!

しかし親戚の老人老婆、昔話に花を咲かせ語らい笑い合い、従兄弟の子どもら小突き合いふざけ合い、学生服の少年ら休日がつぶされたことにふてくされ不服顔、悲しみの色などどこにもない!

人生はまだまだ長いだって?

それもよかろう! だが人生は往々にして、心の準備できぬままある日突然に打ち切られるのだ!

明日は我が身だって?

それもよかろう! だがそれに限って人生はなかなか終わらぬ、老いさらばえ身体は衰え、目と耳は弱り、尻すぼみの人生ひたすら消え入る時を待つ、地獄の苦しみを味わうのだ!

そこへ青空にわかに曇り、1滴2滴、大粒の水落ち、そして突然の豪雨。

黒い喪服にさらに真っ黒な染み無数につくり、叫び声、逃げ惑う老人、夫婦、少年少女、地元権力者、葬儀屋、我先にと屋内に駆け込み、ようやく暗い瞳でみな空を見上げる。

あとに残るは棺桶のみ。霊柩車に半分突っ込まれたまま放置され、誰にも目を向けられることもなく、鈍く光る雨筋いくつも流れる。

死者だけが雨に濡れる。
タグ:人生 葬式
posted by にあごのすけ at 23:53| Comment(0) | TrackBack(0) | もの思う | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年08月24日

童話

サボテン君は砂漠を歩いていました。

水を求めて旅をしていたのです。

見渡す限りの砂、照りつける太陽、サボテン君は何日も何日も歩き続けました。砂丘をいくつも越え、30日目にようやく町が見えました。

サボテン君はさっそく雑貨屋に入りました。

「水をください」
「おっとあぶない」

店番をしていた楠木氏は飛びのきました。

「そんなにトゲだらけじゃ下手に金もうけとれねえや。他の客にも迷惑だ。金をそこに置いてとっとと出てってくれ」

サボテン君は楠木氏の対応にあっけにとられ、しょんぼりとして店を出ました。トボトボと歩いていると背後から声をかける人がいました。

「よお同郷人」

ふりかえるとそれはアロエ氏でした。

「こんな都会でサボテンとはめずらしいな」
「水を求めてやってきたんです」
「そうかい、たいそうなこった。でもそんな風体じゃみんなに嫌われるぜ」

サボテン君はアロエ氏につれられてエステサロンに行きました。ムダ毛よろしくムダトゲの処理をしてもらうためです。トゲを抜くのは激痛をともないました。でもアロエ君の「トゲは都会には似合わない」という言葉を信じてじっとガマンしました。

ツルツルになったサボテン君の肩にアロエ氏は手を回しました。

「さあ、さっぱりしたところでどこに行きたい? 水を求めてここにやってきたんだっけな」

ふたりはバーに行きました。サボテン君はこれでもかというほど水を飲みました。彼にとって水は貴重品でした。

ツルツルでかわいいと夜の街の女の子ら、スミレちゃんやお菊ちゃんやアヤメちゃんからもかわいがられました。気をよくしたサボテン君は夜な夜なバーへとくり出すようになり、最初は水、でも次第にエスカレートしてウイスキーにブランデー、ジン、酒におぼれるようになりました。

ある日、サボテン君はトゲを抜いたところがどす黒く変色していることに気がつきました。それはどんどん広がり、サボテン君は日に日に体調を崩していきました。水を飲みすぎたのがよくなかったのでしょう、根っこも腐りはじめ、ついにはベッドから一歩も起き上がれなくなってしまいました。

サボテン君は病の床でふるさとをなつかしく思い出しました。僕の居場所はやっぱり砂漠なんだ、太陽の照りつける乾いた砂漠で孤独に生きていくのが僕にはお似合いだったんだ。

サボテン君は真っ白い花を咲かせました。サボテン君は涙で目をうるませながら、見舞いにきたアロエ氏に言いました。

「僕が死んだら僕の種を砂漠にまいてください」
「わかった、オレにまかせろ。約束する」
「たのみます」

サボテン君は息をひきとりました。アロエ氏はサボテン君のことなどすぐに忘れてしまいました。

サボテン君は都会のはずれの人気のない墓地に埋葬されました。

やがて墓地の片隅に、誰にも知られることなく、サボテンの芽が芽生えました。
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2008年08月10日

精神病コント

(場面は病院の診察室。白衣を着た医者がデスクに向かっている)

医者:次の方どうぞ。
(男、腹を押さえてドアから入ってくる)
男:うーん……。
医者:どうされましたか。
男:おなかが痛いんです。
医者:おなか。胃腸ですか。
男:たぶんそうですね。
医者:どれくらいの頻度で。
男:月に2,3度、おなかが急にズキズキ痛み出すんです。
医者:いつからですか。
男:もう長年ずっとそうです。
医者:なるほど。……それはまさしく「腹痛病」ですね。
男:えっ、「腹痛病」!?
医者:腹痛と同時に、下痢または便秘をともなうことはありませんか。
男:そのとおりです、おなかが痛いときはいつも下痢するんです!
医者:「腹痛病」の典型的症状ですね。
男:自分がまさか「腹痛病」だったなんて……。なおりますか。
医者:長期にわたって治療する必要がありますが、改善はされます。アドバイスとしては、おなかが痛いときはガマンせずトイレに行けばだいぶんよくなると思いますよ。
男:そうですか……。
医者:これから週1回診察にきてください。がんばってなおしていきましょうね。
男:ありがとうございます。先生それから。
医者:なんでしょう。
男:診断書を書いていただきたいんですけど。
医者:何に使うんですか。
男:おなかが痛くて会社休んだりすると上司がうるさいんです、ハライタくらいで休むなって。「腹痛病」というれっきとした病名がついていれば会社も理解してくれると思うので。
医者:わかりました。処方箋も書いておきますね。
(医者、ペンを走らせる。診断書と、「ビオフェルミン」と書かれた処方箋を男に手渡す)。
医者:ではお大事に。
男:ありがとうございました。

(男、頭を下げ、退場)
posted by にあごのすけ at 18:07| Comment(0) | TrackBack(0) | もの思う | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年07月25日

奇妙な生物

会社帰り。人ごみ。雑踏。
ふと目がとまる、母親と娘。

「これあんたに似合うんちゃう、小さすぎる?」

僕は歩き続ける。駅へと走る女子高生。

「はよせなまにあわへんでー!」

さらに歩き続ける。男ふたり連れ。

「このまえのあれなー、正直どう思った?」

僕の横をすり抜けていく。駅員と乗客。

「この切符まちがえて買うてしもてんけど」

駅前で警備員がスピーカー。

「現在宝くじ販売中です!」

僕はだんだん不思議、いや不安になってくる。
言葉、言葉、言葉があふれかえる。

何この生物?

僕は思う。

何このヘンな生物?? 

言葉なるものをあやつり意思疎通を図る、いや、この生物の営みのほとんどは言葉がなければ成り立たない。

何だこのヘンな生物は?!

考え始めるとなんだかだんだん気色悪くなってくる。

しかし自分もそうやって言葉で考えているのだった。
posted by にあごのすけ at 05:14| Comment(0) | TrackBack(0) | もの思う | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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